わちにんこ

911

アメリカ同時多発テロで標的の一つとなり、飛行機の衝突の衝撃と火災によって倒壊したワールド・トレード・センターは、結果的にこの一連のテロの表紙を飾るメインイベントとして人々に記憶されることになった。WTC以外にもアメリカ国防総省、通称ペンタゴンにも飛行機は突入したし、乗客の勇敢な抵抗によって未遂となった(それでも乗客は全員死亡している)ユナイテッド航空93便のホワイトハウスへの突入も、もし成功していたら攻撃されたアメリカの光景として象徴的に受け止められたかもしれない。しかし、それでもWTCの衝撃、恐怖感を上回ることにはならなかったのではないかと思う。ペンタゴンとホワイトハウスが政治、軍事を司る国の建物である一方で、WTCは民間の建物であり、多くの民間人が犠牲となったことも影響しているだろうが、それよりも、WTCの場合は飛行機の突入、爆発、そして倒壊がテレビ中継され、全世界にリアルタイムに報道されたことが、この衝撃、恐怖感を増大させることになったのだ。
テロのメインイベントをテレビで中継させるには、その現場にメディアを集め、標的にカメラを向けさせる必要がある。そこで、ツインタワーであるWTCが標的に選ばれたのだ。よく言われる様に、WTC覇権国家アメリカのマネーの象徴であることや、その金融界を牛耳るのユダヤ人とアラブ人との長年の確執のためだけでWTCが選ばれたのではない。
多くの人が同時多発テロを思い出す時のビルに突入する飛行機の映像は二機目がサウスタワーに突入する時の映像の筈だ。一機目がノースタワーに突入する映像は殆ど記録されていない。そのビルに、これから飛行機が突入すると知っている人はテロリストか、もしくは飛行場の管制塔でレーダーを眺めている管制官だけだからだ。当初、事故だと思われていた一機目の突入により、メディアの注目が集まり、全世界へアメリカの未曾有の飛行機事故が中継されたことで、メインイベントへの下準備が整ったのだ。目の前で、テレビの前で、一瞬にして数百名の命が失われる光景を多くの人が同時に目撃したのは、人類史上初めてであろう。
テロという行為が、それを実行する人間や団体のメッセージ、イデオロギーを宣伝するために有効な行為なのかは判断しかねるが、テロリズム、即ち恐怖の宣伝装置としては2001年9月11日のテロは最大限に機能していた。その後のアメリカの行動を見れば明らかな様に。